欠員補充のための特別専科教諭

欠員補充のための特別専科教諭
2024年度小学校50名、中学校15名
(2025年度小学校100名、中学校30名)

 大阪市は2月8日市長会見で「本務教員による欠員補充制度の創設」を発表しました。法に基づく定数に加えて市独自に本務教員(特別専科教諭)を25年度までに小学校100名、中学校30名配置します(配置校は定数を上回る配置となる)。年度途中に欠員発生校に勤務先を変更します(年度末まで「兼務発令」)。

 欠員が小学校53、中学校11(23年11月1日)の状況のなか大阪市教は、「『学校が崩壊』する前に欠員解消」を要求してきました。「教員不足」の問題は、「教育予算不足」の問題であり、国の公務員総人件費削減・教職員削減のもとで、定数内講師を多数配置し続けた結果によるものです。欠員補充のためには本務教員を増やす必要があります。

 新規採用者の一部が「特別専科教諭」されること、年度途中で「兼務発令」されることよる問題が生じないようにすることが求められますし、その後の人事の取扱いも、「本人の希望尊重」で慎重に行われなければなりません。

 大阪市教は今後学校園からの疑問や不安について引き続き交渉・協議を行います。

「障害のある子どもの学びの場の充実を求める要求書」を提出しました

大阪市学校園教職員組合(略称・大阪市教、全教加盟)は、6月8日、次の要求書を大阪市教育委員会に提出しました。

障害のある子どもの学びの場の充実を求める要求書

 貴教育委員会において、各学校長に対し「令和8年度をめどに全校に『通級による指導』の学びの場を全校に開設する方針」が4月初めに示され、「障がいのある児童生徒の学びの場の充実について」(5月30日付)が発出されました。

 2022年6月の「就学相談や自立活動等に関する研修」以降、各学校において、特別支援教育体制の後退への懸念が広がっています。研修の際に示された「障害の種類及び程度」により、特別支援学級への入級抑制が既に起きており、保護者や子どもの特別な教育的ニーズに応じた支援体制へのアクセスが妨げられています。また、通級指導教室が今年度新設された学校においては、「特別支援学級が複数も削減された」「教員が減ったことにより、特別支援学級、通級指導教室を含めた学校全体の特別支援教育体制に支障が出ている」という事態が起きています。

 私たち大阪市教は、これまで継続して、障害のある子どもの教育的ニーズに応じた特別支援学級・通級指導教室の設置と、障害のある子どもをふくめた全ての子どもが豊かに学べる学校教育の充実を求めてきました。教員配置の後退は、非常に問題であり大変危倶するところです。障害のある子どもが安心して学校生活を送り、個々の教育的ニーズに応じた教育を進めるためには、さらなる人的配置こそ求められるところであります。

 以上のことをふまえ、貴教育委員会においてはく障害のある子どもたちの発達を保障する教育の実現と、障害児教育に関わる教職員の勤務労働条件を改善するため、障害のある子どもの学びの場の充実に関する下記の事項について、誠意ある対応を行うことを要求します。

1.2023年度の特別支援学級設置状況について以下の点を早急に明らかにすること。

 (1) 特別支援学級数の増減の状況
 (2) 特別支援学級の減少や通級指導教室の新設にあたっての加配措置の有無
 (3) 特別支援学級からの学びの場の変更を行った児童・生徒数
 (4) 通級指導教室を利用する児童・生徒数

2.2024年度の特別支援学級設置計画の作成にあたっては、「障害の種類及び程度」を入級制限するものとして扱うことなく、子どもや保護者が必要とする教育的ニーズに応じた就学・入級の相談・決定を行うこと。特にLD・ADHDの子どもにおいても、子どもの実態に即した特別支援学級での学習を必要とする場合には、特別支援学級への入級も可能とし、その旨を各校にも周知すること。

3.2024年度の特別支援学級設置計画にあたっては、障害種別による学級設置と既定の学級定数を遵守すること。また、学校からの申請に基づき、障害種別での在籍が1人の場合もその種別での学級設置を行うこと。

4.通級指導教室を開設する学校において、特別支援学級からの学びの場の変更の強要が行われないようにすること。通級指導教室の設置を「受け皿」にするような特別支援学級への入級抑制、特別支援学級からの安易な学びの場の変更を行わないこと。

5.特別支援学級担任・通常学級担任ならびに特別支援教育コーディネーター・通級指導教室担当教員を含む教職員に対し、学びの場の変更を保護者に促すような役割を課さないこと。

6.特別支援学級からの学びの場の変更にともない、特別支援学級の設置に大幅な減少が生じた場合は、指導・支援体制の維持・改善のための加配教員を配置すること。

7.通級指導教室が、現状において既に過大・過密状態があることをふまえ。通級指導教室の基礎定数化が国により進められていることを念頭に、利用児童・生徒数13人を目安に1校への複数教室を設置すること。

8.障害のある子どもの学びの充実を各校で進めるためにも、特別支援教育コーディネーターを専任で配置すること。専任配置にあたっては、教員加配を行うこと。

9.特別支援教育サポーターを増員すること。

10.全ての子どもたちの発達が保障される教育の実現のために、「学力テスト体制」や「学校安心ルール」等による管理教育を改め、少人数学級の実現、教職員の増員等により学校教育を充実すること。

以上

感染拡大防止、子ども・教職員・職員の命と健康を守る措置継続を

 大阪市当局は5月1日、市労組連に対し「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴う労働条件について」を提案してきました。特別休暇、予防接種のための職務専念義務の免除、特殊勤務手当の特例措置の取扱いを5月7日をもって終了するというもの。

 市労組連は提案に対して、「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う特例措置に関わる申し入れ」を行いました。

 全国一の死亡を出した行政責任の明確化、必要な措置の継続、学校保健安全法の規定、学校園長の判断の尊重、特別休暇等の継続等12項目。提案の再考を強く求めました。

市労組連申し入れ(PDF)

2023年5月1日

大阪市長
横山 英幸 様

大阪市労働組合総連合
執行委員長 宮城 登

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う特例措置に関わる申し入れ

 新型コロナウイルス感染症法上の位置づけが 5 月 8 日から 2 類感染症から 5 類感染症に移行することが正式に決まったと厚生労働大臣が4月27日に発表しました。これに伴い新型コロナウイルス感染症対策の基本法的対処方針は廃止されます。あわせて総務省から地方公共団体宛てに発出された通知等で示された「新型コロナウイルス感染症の感染防止に向けた職場における対応」等の取扱いについても終了するとされています。

 しかし、新型コロナウイルス感染症の新規感染者は直近の7週続けて前週比 1.06倍から 1.24倍と増加が続いており、大阪モデルモニタリング指標でも大阪市内は「明らかに増加傾向」であることが示されています。さらに専門家からは第9波が起きることが言われています。

 こうした中で、感染症法上の位置づけが引き下げられたからといって、すぐに特例措置を廃止すれば、感染の大幅な再拡大を引き起こしかねません。また職場においても職員等の感染が増えれば行政運営や教育行政にも大きな支障を引き起こしかねません。地方公共団体としてそのようなことは絶対に避けなければなりません。

 ついては、教職員・職員が安心して働ける労働条件の確保、市民サービス継続や子どもたちが安心して学べる環境をつくるためにも新型コロナウイルス感染症に対する対策を継続する必要があると考えますので、以下の点について申し入れます。

1.新型コロナ感染症による死亡累計が、大阪府 8,546人、大阪市 3,442人(4月27日)で、全国一となっている原因、行政責任を明らかにすること。

2.感染拡大防止、子ども・教職員・職員の命と健康を守ることを最優先に、必要な措置を継続すること。

3.市長による一斉休校、「オンライン授業」の強制は、教育に対する「不当な支配」(教育基本法)であり、繰り返さないこと。教育行政に対する地方教育行政法違反の不当な介入を止めること。

4.学校保健安全法の規定、学校園長の判断を尊重すること。

5.現在行われている特例措置を継続すること。

6.新型コロナウイルス感染症のワクチン接種や感染による後遺症に罹患している教職員・職員に対して、勤務上の配慮を行うこと。また、特別休暇を認めること。

7.感染拡大防止に対応する職員やスタッフ体制を強化し、マスクや防護服など個人防御具を十分に確保し、安心して業務に従事できる環境を整備すること。

8.保健師など専門職員を抜本的に増員し、保健所等の公衆衛生機能を充実させること。

9.子ども、教職員、職員のPCR検査を実施すること。

10.新型コロナウイルス感染症罹患により重篤化する可能性が高い、妊婦(妊婦のパートナーを含む)、基礎疾患のある教職員、高齢者や介護等を必要とする家族がいる教職員・職員等への特別休暇を有給で新設すること。感染リスクを減らすため、在宅勤務や教育公務員特例法第22条に基づく自宅での研修承認を必要に応じて積極的に活用すること。3密を避けるための時差通勤、マイカー通勤等について必要に応じて承認すること等、労安(安全配慮義務)の観点も踏まえて対応すること。

11.感染による特別休暇取得者が多数の職場・学校園について、市民の命と健康、子どもの学習権、安全な学校園生活を保障するため、人的措置を行うこと。欠員が生じている職場、学校園に、直ちに職員・代替講師を配置すること。

12.市民、職員、子ども教職員への感染を防ぐため、感染症を原因とする病気休暇取得により不利益が生じないよう、勤勉手当の支給割合に関する「欠勤日数等」から、「病気休暇」を除外すること。

以上

 

 

 

 

「あるとき・ないとき」パンフへ私の意見・要望

あるとき・ないとき

    「あるとき・ないとき」パンフ

    1 「あるとき・ないとき」パンフを見ての感想や職場の方からのご意見などお書きくだい(自由記述)
     

    2 「私ならこんなことできる」項目に✔を(いくつでも)

    (1) 学校園で‥‥
    仕事のことや学級のことを話し合う。
    しんどかったことや良かったことなど出しあう。
    来年度に向けて学校園づくりについて話し合う。
    学校園の改善と地方選挙との関係について話し合う。

    (2) 街で
    市長選挙など地方選挙について知り合いと話す。
    4月9日の市長選挙など、棄権せずに投票する。

    3 よろしかったらクリックし✔を入れてください

    年齢

    10代20代30代40代50代60代70代

    勤務校園の種類

    中学校小学校幼稚園

    ご協力ありがとうございました。

    さしつかえなければご記入ください。

    校園名 学校園


    アンケートの内容は以上でよろしいでしょうか。よろしければ「承認します」にチェック✔を入れてから、送信ボタンをクリックしてください。確認画面はありません。


    大阪障害児教育運動連絡会 文部科学省4.27通知に対する見解

    障教連文科省427通知に対する見解

     この見解のダウンロードはこちら(PDF B5版4ページ)

    障害のある子どもをふくめた全ての子どもの発達が保障される教育の実現を求めます

    「特解別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」(文部科学省2022年4月27日付通知)に対する見解

     大阪の障害児教育にかかわる6団体でつくる「大阪障害児教育運動連絡会」は、文部科学省が4月27日に発出した通知「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」に関する見解を9月22日にとりまとめて公表しました。

     ぜひ多くの皆さんにお読みいただき、ご意見などをお寄せいただきますようお願いいたします。

    <大阪障害児教育運動連絡会 構成団体>
    大阪府立障害児学校教職員組合
    大阪教職員組合 障害児教育部
    大阪障害児・者を守る会
    大阪の障害児教育をよくする会
    全国障害者問題研究会 大阪支部
    障害者(児)を守る全大阪連絡協議会

    連絡先/〒543-0021 大阪市天王寺区東高津町7-11 大阪府教育会館704 号
    TEL (06)6765-8904 FAX (06)6765-8905
    E-mail fushoukyou_1◎@mtb.biglobe.ne.jp (◎は@に変えてください)

    通知に関する私たちの見解

     本年4月27日、文科省から「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知)」(以下通知と表記)が都道府県教委、指定都市教委等に対し発出され、同内容が、大阪府教育庁から市町村教委に5月10日付で周知されました。これに伴い、各地で大混乱が起きています。

    先生が減らされたり、居場所がなくなったりすると困ります

     通知では、特別支援学級に在籍する子どもの学習の場について、以下のことが示されています。

    ・令和3年度に一部の自治体を対象に実施した調査(※引用注 大阪府、大阪市が含まれる)において、特別支援学級に在籍する児童生徒が、大半の時間を交流及び共同学習として通常の学級で学び、特別支援学級において…指導を十分に受けていない事例があること。

    ・障害のある児童生徒が、必要な指導体制を整えないまま、交流及び共同学習として通常の学級で指導を受けることが継続するような状況は、実質的には、通常の学級に在籍して通級による指導を受ける状況と変わらず、不適切であること。

    ・特別支援学級に在籍している児童生徒が、大半の時間を交流及び共同学習として通常の学級で学んでいる場合には、学びの場の変更を検討するべきであること。…原則として週の半分以上を目安として特別支援学級において…授業を行うこと。

     大阪ではこれまで、「共に学び、共に育つ」教育を掲げ、障害のある子どもも通常学級で学ぶことを「原学級保障」として推し進められてきました。対してこの通知は、通常学級における交流及び共同教育への過度な傾倒を問題であると取り上げ、実質的に、大阪の方針の転換を迫る内容となっています。

     この通知を受けて大阪市・堺市を含む府内の各教育委員会では、各学校や保護者に対して、特別支援学級在籍の変更や、学習内容の早急な変更を求める動きが出てきています。ある自治体では、特別支援学級での授業時数を示しながら次年度の在籍について確認する文書が、別の自治体では「新しい支援教育の方針」を示し、特別支援学級での学習の「同意」を求める文書が、保護者に配布されました。

    特別支援学級「原則として週の授業時数の半分以上」の「目安」の明示では、一人ひとりの教育的ニーズに応じられない

     私たち大阪障害児教育運動連絡会とその構成団体は、これまで一貫して障害のある子どもたちの発達を保障する教育の実現のために、特別支援学校・特別支援学級の充実、通級指導教室の全校設置をはじめ、通常学級をふくめた教育条件の改善を目指し取り組みを進めてきました。その中で、「共に学び、共に育つ」教育のもと、障害のある子どもが十分な支援を受けられないまま通常学級での学習を押しつけられることがあってはならないと指摘し、特別支援学校・特別支援学級での発達に応じた教育の充実を求めてきました。今回の通知は一見すると、大阪の「共に学び、共に育つ」教育の問題点を是正し、特別支援学級での子どもたちの実態にあわせた学習を促すようにも見えます。しかし実際は、この通知では障害児教育の充実にはつながらず、むしろ後退させるものと考えます。

     学校からの突然の連絡や報道等の情報に触れ、各地で不安の声があがっています。ある保護者は「うちの子の場合は、特別支援学級に在籍できないのか」「通級指導教室といっても、我が子が通う学校には設置されていない」と、先行きの不透明さへの不安を露わにします。

     通知は、冒頭で「一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要です」と示しておきながら、指導を可能とする条件整備が、どこにも示されていません。そればかりかむしろ「最も的確に応える指導」という文言には、支援の幅を広げるものではなく、個に応じるという名目で支援を効率化・限定化するようなきらいがあります。

     一人ひとりの教育的ニーズは多様であり、また環境や時々の状況により変化するものです。さらに、それぞれの子どもや学校・地域の指導・支援の経緯がある中で、通知のような形で基準を示すことは、子どもや保護者の不安をあおり、障害のある子どもたちの成長・発達の場を奪うものとなりかねません。

    通知による、障害児のための教育保障・合理的配慮にかかる経費削減を懸念

     通知に触れ、学校生活にあたり、安全の見守りや集団生活への不安の解消を期待して特別支援学級に在籍した子どもや保護者から不安の声があがっています。特別支援学級に在籍し通常の学級での学習をがんばっている発達障害の子の保護者からは、「しんどくなった時にクールダウンできたり見守ってもらったりするためにと思い特別支援学級に在籍しました。確かに、うちの子は大部分が通常学級でもできるかもしれないけれど、先生が減るのは困るし、話が違うと思います」と、支援体制の後退を心配します。また肢体不自由児の保護者からは「自分で歩行することもできるため、安全な移動の見守り支援など合理的配慮の保障を期待して特別支援学級に在籍した。在籍でなくなると、これらの支援は保障されるのでしょうか」と指摘します。

     私たちは、通知の本質は障害児のための教育の充実、合理的配慮のための環境整備を図るものではないと考えます。通知の本当のねらいは、特別支援学級に在籍する子どもの数と学級数を減らし、障害への合理的配慮にかかる経費をおさえることにあると考えます。

    保護者への十分な説明が行われないことへの強い憤り

     通知を受け、保護者に対する説明が十分に行われないまま、学びの場の「変更」が進められている状況が広がっています。中には教育委員会としての方針が定まらず、学校によって説明が異なる地域もあり、不信感も広がっています。このような中で、「学びの場」の変更を意図すると思われる確認や同意の取り付けが進められることに、怒りの声が上がっています。

     そもそも文科省は、これまで特別支援学級在籍の子どもたちの通常学級での「交流及び共同学習」を推奨してきました。05年の『特別支援教育を推進するための制度の在り方について』(中教審答申)や、昨年度の『新しい特別支援教育の在り方に関する有識者会議』、『障害のある子供の教育支援の手引』にも示されており、今回の通知はこれらとの矛盾が見られます。これが、混乱をより一層強める要因となっています。

     教育の場の選択は、子どもやその保護者の納得と同意が原則です。しかし現状は、この原則がないがしろにされています。子どもや保護者が納得できるような十分な説明がないまま判断を迫られている状況に、私たちは強い憤りを感じています。

    不十分な特別支援教育の条件の中で、大阪の特別支援学級が担ってきたもの

    学校そのものが、子どもたちにとって過ごしやすい場所になっていない

     大阪府内の特別支援学級に在籍する子どもは、特別支援教育が始まった07年度と比べて21年度は3.53倍となりました。これは、全国にも増して高い水準です。通知を出すにあたり、文科省は「在籍の割合が高い地域」への調査を根拠にしましたが、大阪をはじめ全国の在籍数の増加の背景には、特別支援学級の「適切な運用」や学びの場の「適切な判断」の問題にとどまらない、教育そのもののあり方の問題が含まれていると、私たちは考えています。

     クールダウンの場として特別支援学級を利用していた子どもは、「通常学級は、生徒がいっぱいいて先生は1人しかいないのに対応してもらえるわけないやん。先生も忙しいし」と学校の状況を語ります。先生が子どもたちと丁寧に関わるには、1学級の人数が多すぎること、日々の業務に多忙なことを子どもが察して遠慮するような状況です。またある保護者は、「通常学級では子どもたちがテストと競争によるストレスで、荒れや不登校、いじめなどが心配」と語り、学校そのものが子どもたちにとって、過ごしやすい場所になっていないという現状を憂います。

     今、学校は「全国学力状況調査」や大阪府が進める「チャレンジテスト」「すくすくウォッチ」などの競争と管理の強化により、子どもたちにとって生きづらい場所となっていっています。特別支援学級や特別支援学校に在籍する子どもの増加の背景にはこうした通常教育が抱える問題もあると考えます。

    子どもや保護者に寄り添い励ます役割を担ってきた特別支援学級

     生きづらい場所となっている学校において、特別支援学級とその担任の先生は、子どもや保護者の不安に寄り添い、子どもの成長・発達への希望を指し示し、子どもたちが真に安心して学校生活を送るために大きな役割を果たしてきました。特に、大阪の小中学校では本人・保護者の意向を踏まえ可能な活動については通常の学級で行い、小集団が好ましい活動や個に応じた学習については個別に特別支援学級で行うという方式も行われてきました。ある保護者は、「特別支援学級での授業時数には表れない、生活面・精神面で下支えしてきた特別支援学級」の役割を指摘します。大阪の特別支援学級は、全国にも増して、子どもの駆け込み寺として機能し、通常学級と連携しながら保護者の不安感に寄り添い励ましてきました。自己選択・自己責任の考えが広がる中で、生きづらさをかかえた我が子を守りたい一心で特別支援学級への入級を希望する保護者の切実な思いを支えることも、特別支援学級の大事な役割のひとつとなっています。

     他方で、大阪府内では、「共生・共育」が掲げられる中で、本人や保護者が希望するにもかかわらず、特別支援学級の授業を「算数」「国語」の教科のみに限定したり、子どもの障害や発達状況を軽視して理解が困難な通常の学級の授業に参加させたりといった、生き生きとした主体的な学びが奪われてきた実態があります。中にはストレスのために「自傷」「他傷」や行き渋り・不登校などの二次障害を引き起こし、居場所を求めて支援学校に転校するというケースもあります。私たちはこのような行き過ぎた「共に学び・共に育つ」教育を是正し、どの子も安心して学び、発達が保障される教育に変えていくことも課題だと考えています。

     通知が示す「適切な運用」からは、大阪の特別支援学級が担ってきた、子どもや保護者をささえる役割が見えてきません。大阪の特別支援学級が担ってきた役割を正当に評価し、支援・指導を限定してきたこれまでの方針を是正することが大切です。そのためにも、一人ひとりの教育的ニーズを踏まえたカリキュラムと支援体制の充実が不可欠です。通常学級や特別支援学級、通級指導教室が子どもの学びの場としてふさわしい環境として整備され、特別支援学級での学習時間で「適切」かどうかをはかるのではなく、豊かな環境の下で学校全体が連携して支援を展開できるようにすることこそ必要と考えます。

    一人ひとりの教育的ニーズに応え得る教育条件整備こそ急務

     通知では、学びの場の変更にあたっての支援の方策として「通級指導教室」が示されています。しかし、実際は子どものニーズに応じられるような設置状況ではありません。府内にある小・中学校1434校に対して通級指導教室は約3割の456教室しかありません。各地の設置状況にもばらつきがあり、中には20校に1教室しか設置されていない地域もあります。また、依然として保護者の送り迎えを必要とする他校通級が中心で、1教室40人を超える子どもが利用する教室もある等、支援を受けるには大きな制約があります。今後、13人定員へと整備されていく見通しですが、8人定員の特別支援学級の支援体制とは大きな格差があります。これでは、学ぶ権利の後退にもなりかねません。

     保護者の相談や各方面との連携を担う、特別支援コーディネーターも専任配置ではありません。特別支援学級や通常学級の担任をしながらでは、「話を聞いてもらいたい。相談したい」という保護者の思いにいつでも応じられる状況ではありません。通常学級に在籍し望めば安心して利用できる自校通級の通級指導教室の全校設置や定数の改善、特別支援コーディネーターの専任化を急ぐ必要があります。

     子どもの発達を保障し、保護者を支える役割を担っている特別支援学級においても、決して十分な条件ではありません。特別支援学級在籍数が3.53倍になる一方で、学級設置は2.56倍に留められています(07年度比)。特別支援学級定数は30年前から改善されず8人のままで、重複障害のある子どもに対しても加配等の措置もありません。また、中には1年から6年まで全ての学年の子どもが学ぶ学級もあります。特別支援学級の縮減が懸念されるような通知ではなく、在籍児童・生徒数の増加に実質的に見合った特別支援学級の増設置と、学級定数を6人に引き下げるなど特別支援学級の教育条件改善をすすめる事こそが必要です。

    私たちの願い

     文科省通知は、教育そのものが抱える問題、在籍が増える理由の本質に触れられていません。そして、不十分な支援体制の中で、大阪の特別支援学級担任が担ってきた重要な役割についても触れることなく、「特別支援学級」を拠り所にしてきた保護者の思いを汲む内容は、一切示されていません。それにもかかわらず、通知が特別支援学級での授業時数を根拠に「学びの場の変更」を求めることは極めて不適切です。保護者の願いや子どもの状況、地域の実情を踏まえずに、紋切り型に切り捨てるようなことは、とうてい認められません。私たちは、障害のある子どもたちの発達を保障する教育を求めます。そのためにも、

    ・地域に密着した小規模・適正な特別支援学校の新設
    ・特別支援学級の定数改善(当面6人に)と増設置
    ・通級指導教室の全校設置と定数改善、指導・支援体制の充実
    ・特別支援コーディネーターの専任配置
    ・中学校も含めた義務教育全学年35人学級の実現など通常学級の定数改善
    ・通常学級での合理的配慮を可能とする人的・物的・技術的な諸条件の整備
    ・看護師・介助員・相談員等、障害のある子どもの支援を充実するための人的配置

    など、教育条件の改善を強く求めます。そしてその改善が、保護者や子どもの思いを十分に聞き取って進められることを原則とするよう求めます。

     このほど国連障害者権利委員会は、「総括所見(22年9月9日)」を取りまとめて日本政府に施策の改善を求めました。障害児教育に関しては、今回の通知を撤回するよう名指しで勧告するとともに、インクルーシブ教育の推進を強く求めています。

     今求められているのは、管理と競争によって子どもたちを「排除する」教育を改め、少人数学級の実現や障害のある子ども、不登校・被虐待・非行・貧困問題、外国籍ルーツの子どもや帰国子女など様々な困難や「特別な教育的ニーズ」を抱える子どもたちの尊厳と多様性を「包み込む」=「排除しない」真のインクルーシブ教育の実現です。単に学ぶ場を一緒にしたことでインクルーシブが実現したとは到底言えません。現在の、多くの子どもたちが居場所を失い、学ぶ意欲をそがれ、生き生きと活動できない競争・管理主義教育をきっぱりと是正してこそ、真のインクルーシブ教育は実現できます。それは私たちが求める教育諸条件の改善を第一歩として、多くの教育関係者・市民の共同の力で実を結んでいくものであると考えます。

     私たちは、競争・管理に傾倒する教育のあり方の是正をもとめ、貧しい教育条件のまま、「通常学級か特別支援学級か」「地域の学校か支援学校か」という二者択一を迫るのではなく、一人ひとりの障害や発達の状態、教育的ニーズに応じる事が可能な基礎的な条件整備を進めることを求めます。

     大阪の障害児教育における教育条件整備と、子どもの実態に応じた障害児教育の充実の上で、障害のある子どもをふくめた全ての子どもの発達が保障される教育を実現するために、通知の即時撤回を求めます。

    「学力向上支援チーム事業」(若手の授業 数値で評価)についての要求書を提出しました

    2022年2月24日

    大阪市教育委員会教育長
     山本晋次 様

    大阪市学校園教職員組合
    執行委員長 宮城登

     「学力向上支援チーム事業」(若手の授業 数値で評価)についての要求書(PDF)

    「学力向上支援チーム事業」(若手の授業 数値で評価)についての要求書

     朝日新聞2022年2月10日付は、「若手の授業 数値で評価」の見出しで、「大阪市教育委員会は4月から、若手教員の授業を数値で評価する事業を全市立小中学校で始める。元校長らが評価し、児童生徒にもアンケートで『わかりやすさ』などを尋ねる。」と報じました。

     オンラインにコメントが9日、10日約300件寄せられ(デジタルは9日17:56配信)、「若い教員は萎縮」「授業を研究させる暇も与えない。満足に研究できなかった授業で日々を凌いでいる若手は低評価を受けて自信を無くす」「まずは労働環境の改善」「こんなことをするから大阪の若い先生の離職率が高いし、採用倍率も下がるんですよ」「大阪の教員を目指す若者は確実に減少する」「教職志望の学生に学生課が『大阪は止めといた方が良い』と言うんですね。教職志望率最低の大阪」「これでまた教員志望が減る…教員が足りなくなる…ブラックな職場が蔓延…それが現実」「教育現場に数値目標や評価が合わない」「もう大阪の公教育は破綻する。教育ではなく、政治主導による、サービス業そのもの」等々の声が上がりました。

     大阪市は2月16日、「令和4年度(2022年度)当初予算(案)」を公表しました。「令和4年度予算(案)について~豊かな大阪の実現に向けて~PDF版)」「きめ細やかな質の高い学校教育の推進①」、新規事業「学力向上支援チーム事業」の項で、「スクールアドバイザーによる訪問指導(小中学校等 全409校)」を上げています。「令和4年度予算案・説明」では、「全小中学校等の教員の授業力向上を図るとともに、学力に課題の見られる全ての児童生徒へのきめ細やかで継続した指導・支援のため、ブロック担当指導主事やスクールアドバイザー(指導技術に長けた元校長等 44 人)などから構成される「支援チーム」を設置 ・スクールアドバイザーが小中学校等全409校を定期的に訪問(月2回程度)し、データ等の分析に基づいた実践的指導助言を行うことにより、教員の授業力向上を支援」としましたが、「若手の教員」「数値で評価」の記述はありません。

     朝日新聞2月19日付は、「2022年度の主な教育関連予算」として、「・学力向上支援チーム事業(5億5400万円)約400の全小中学校を元校長らの『支援チーム』が月2回程度訪れ、各教員1人の授業を評価・指導。教員の授業力向上を図る。」報じました。

     学校園現場では「若手の授業 数値で評価」の突然の報道に、驚き、不安、怒りの声が上がっています。大阪市学校園教職員組合は「「若手の授業 数値で評価」の撤回を求めます。コロナ禍のもと子どもの命と健康を守る、教職員が一丸となった取り組みに分断を持ち込む「評価」を止めることをこの間要求してきました(大阪市教職員組合協議会労働条件改善要求書2022年1月21日 人事評価制度において絶対評価との矛盾を広げ、成績主義を強める相対評価を廃止すること。教育職員に対して、職員基本条例第3条の定めに反する、また公正性・納得性・透明性に大きな問題を持つ人事評価制度(相対評価)を止めること。大阪市人事評価制度を人事・処遇に連動させないこと)。                    
     また、「授業アンケート」の問題点を指摘し実施反対の立場を明らかにしてきました。

     勤務労働条件に大きく関わる「若手の授業 数値で評価」の問題について、事業の詳細を提案し、協議に応じることを要求します。

    1.新聞報道の内容、「スクールアドバイザーによる訪問指導」の詳細について説明すること。

    2.訪問指導の対象となる「若手」を明らかにすること。

    3.なぜ「若手」なのか、「若手」を対象とする根拠、根拠法令は何か明らかにすること。

    4.「実践的指導助言」ではなく、「評価」なのか、「評価」をする根拠、根拠法令は何かを明らかに 
    すること。

    5.各校1人はどのように選ぶのか。差別的扱いではないのか。

    6.「数値で評価」の詳細を明らかにすること。

    7.人事評価制度(相対評価)を止めること。人事・処遇に連動させないこと

    以上

    ================================

    <資料1.> 朝日新聞2022年2月10日

    若手の授業 数値で評価 大阪市教委

     大阪市教育委員会は4月から・若手教員の授業を数値で評価する事業を全市立小中学校で始める。元校長らが評価し、児童生徒にもアンケートで授業の「わかりやすさ」などを尋ねる。市教委によると、他の自治体で同様の取り組みは把握していないという。

     大阪市は今年度、全国学力調査の全科目の結果で全国平均を下回っており、主に若手教員らの授業を改善して学力の底上げにつなげたい考えだ。評価するのは約400の全市立小中学校で各校1人の授業。対象は小学校では国語と算数、中学校は学校ごとに数科目を選ぶ。元校長らが授業を見て「板書のわかりやすさ」「発問の工夫」など9項目で4段階評価して助言もし、教員も自己評価する。児童生徒にもアンケートをし、授業の「わかりやすさ」「楽しさ」など7項目を4段階で尋ねる

    <資料2.> 朝日新聞2022年2月10日

    ・学力向上支援チーム事業(5億5400万円)
     約400の全小中学校を元校長らの「支援チーム」が月2回程度訪れ、各校教員1人の授業を評価・指導。教員の授業力向上を図る。学力に課題のある児童生徒の多い小中90校で、元教員らが放課後学習支援をする。

    ・学校教育ICT活用事業(65億8900万円)
     新型コロナ感染拡大時の学びの保障のため、教員によるオンライン学習の取り組みを支援するため、ICT教育アシスタントを37人から65人に増員する。

    <資料3.> 令和4年度(2022年度)当初予算(案)2022年2月16日
    令和4年度予算(案)について ~ 豊かな大阪の実現に向けて ~(PDF版)

     

     

     

    「ICTを活用した教育の推進」批判学習会(2月23日)

    「ICTを活用した教育の推進」批判学習会

     この案内のダウンロードはこちら(PDF)

    市教委「ICTを活用した教育の推進」批判学習会
    子どもの学びは? 個人情報は?
    デジタル庁「教育データ利活用」のもとで 

     大阪市総合教育会議が1月18日に行われ、教育振興基本計画(案)が決められました。
    基本的な方向6は、教育DX(デジタルトランスフォーメーション)となっています。
    大阪市の「ダッシュボード」は教育再生実行会議資料やNewton別冊「人工知能 完全版」に紹介されています。子どもの学び・個人情報を守るため、ICT教育を批判的に学習しましょう。

    講師:田中康寛さん 大阪教育文化センター事務局次長
         「GIGAスクール構想の危険なねらいと本質」著者
                    『人権と部落問題』2022年1月号

    ○日時:2月23日(祝・水)13時30分~      
    ○会場:アネックスパル法円坂(JR環状線・森ノ宮、地下鉄谷町四丁目)

    主催 大阪市学校園教職員組合(06-6910-8700)

    教育振興基本計画(素案)討議資料を発行しました

    大阪市教育振興基本計画(素案)討議資料を発行しました。

     大阪市教育振興基本計画(22~25年度)素案のパブリックコメントが11月1日まで行われました。教育振興基本計画の「主たる記載事項は、学校の耐震化、学校の統廃合、少人数学級の推進、総合的な放課後対策…予算や条例等…事項についての目標や根本となる方針…」(文科省通知)であるにも関わらず、市長が教育内容にまで「不当な支配」を行う仕組みとなっています。パブリックコメントに提出した文章を掲載します。

    教育振興基本計画(素案)(PDF)

    「学校現場への抗原検査導入反対」要求書提出

    「学校現場への抗原検査導入反対」要求書提出8月30日

     大阪市教・養護教職員部は8月30日、「学校現場への抗原検査導入反対」要求書を提出しました。

     「抗原検査を学校現場に導入することは、教職員と子ども・保護者との関係性を難しくし、教職員の業務の過大な負担と教職員のメンタルヘルスや感染リスクに大きな影響を及ぼすと考えます。抗原検査の学校現場導入には強く反対し、学校現場に押し付けないことを要求します。」

     国際医療福祉大学教授の和田耕治氏は、「小中学生が自分たちで検査するということは基本的にないと考えます。医療機関を受診させて下さい。」と指摘しています。

     そして、学校園に通知する場合、9点にわたって明らかにすることを求めました。

    大阪市教ニュース(画像PDF)