大阪市の中学校歴史・公民教科書採択の結果について(市民の会見解)

大阪市の中学校歴史・公民教科書採択の結果について

2020年8月25日
戦争美化の教科書を子どもたちにわたさない大阪市民の会

PDFアイコン大阪市の中学校歴史・公民教科書採択の結果について

 大阪市教育委員会は8月25日、来年度から使用する中学校歴史・公民教科書について、前回2015年橋下市政のもとでの決定を転換し、育鵬社版歴史・公民教科書を不採択としました。

 戦争美化の教科書を子どもたちにわたさない大阪市民の会(教科書大阪市民の会)は、「学問的成果を踏まえず、子どもの発達段階を無視し、戦争を美化する特異な歴史観・政治的主張を子どもたちに押し付ける育鵬社版・自由社版教科書」が採択されなかったこと、「子どもたちにわたさない」との市民の願いが実現したことについて心から歓迎いたします。

 市民の声、教科書大阪市民の会等の要望を真摯に受け止め、検討された大阪市教育委員会の見識に改めて敬意を表します。

 前回2015年の育鵬社版教科書採択の際、教科書大阪市民の会は、戦争を美化し、憲法改悪をめざす教科書の採択に強く抗議しました。そして、「私たちは、育鵬社の教科書の内容を広く市民に知らせ、このような危険な教科書を子どもたちにわたしてはならないとの合意を広げ、保護者・市民と共同して、子どもと教育を守る取り組みを引き続きすすめる」、「次回の教科書改定には必ずこの決定を撤回させる」ことを表明しました。

 以降、5年間にわたって教科書大阪市民の会は、継続的に「育鵬社版教科書を読む会」を開催し、育鵬社版歴史・公民教科書を詳細に検討してきました。その結果を「ファクトチェック(歴史・公民)100」としてまとめ、育鵬社版教科書が、学問の成果に基づかず、いかに間違いが多いか、また、子どもの学習・理解を妨げるものであるかを具体的に指摘して、そもそも文部科学省が検定合格にしてはならない教科書であることを、広く市民に明らかにしてきました。そのため学習会、集会を開催してきました。この間、大阪市議会での教科書問題での陳情採択等の経過も踏まえながら、育鵬社版教科書を許さない取り組み交流会を開催し、大阪府下各地の取り組みとも連帯してきました。

 また、「サンフランシスコ市との姉妹都市解消」問題(2018年)、「あいちトリエンナーレ2019『表現の不自由展』中止問題(2019年)や憲法改悪をあおる吉村知事、松井市長の役割について、市民団体とともにその問題点を明らかにしてきました。

 これらの取り組みの上に、2020年5月29日大阪市教育委員会教育長に「中学校の歴史・公民教科書の採択にあたっての要望書」を提出し、以下の点を要求し、7月30日に交渉(懇談)を行いました。

中学校の歴史・公民教科書の採択にあたっての要望書

―学問的成果を踏まえず、子どもの発達段階を無視し、戦争を美化する特異な歴史観・政治的主張を子どもたちに押し付ける育鵬社版・自由社版教科書を採択せず、普通の教科書会社が発行する教科書を採択されるように要望します―

① 国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を原則とする日本国憲法の精神に反する育鵬社版、自由社版の教科書は絶対に採択しないで下さい。

② 本市の学校には在日外国人の子どもたちも多数在籍しています。諸外国との友好・連帯を何よりも大切にし、まかり間違っても、排外主義や嫌中、嫌韓感情を助長する教科書は採択しないように強く求めます。

③ 教室で実際の教育活動にあたる教師の意見に耳を傾けてください。

④ 教科書閲覧などを通じて、市民の声に真摯に耳を傾けてください。

⑤ 新型コロナ問題の先が見通せないなか、教職員や保護者や市民が教科書の検討を可能とする十分な閲覧会場と日程を保証してください。

⑥ 教育行政にあたる皆さんが、如何なる政治的圧力にも屈することなく、日本国憲法の精神と、良心のみに従って、教科書選定作業を行われるよう強く要請いたします。

 教科書大阪市民の会は、引き続き教科書の問題をはじめ、戦争美化、改憲誘導の教育の問題点を市民に明らかにしていきます。今後も、教育の場において子どもたちに「最善の利益」をもたらすように市民の立場から発信し行動していきます。

           戦争美化の教科書を子どもたちにわたさない大阪市民の会
                   代表委員 野竹 好孝・岩下美佐子