テスト漬けのサイクル確立 総合教育会議

テスト漬けのサイクル確立

総合教育会議 「学力向上に向けた総合的な制度構築」

   平成30年度第3回大阪市総合教育会議開催結果(大阪市HP)
      ↑録画映像へのリンクもあります。

   資料 学力向上に向けた総合的な制度構築について(PDF)(大阪市HP)
   資料 西村事務局顧問 説明資料(学力向上推進モデル事業における取組の進捗)(PDF)(大阪市HP)
   資料 大森特別顧問 提案資料(学校・校長及び教職員を対象とする新たな表彰制度等について(提案))(PDF)(大阪市HP)

テスト結果の向上度で 人事評価 教員カルテ構築

 教育委員、吉村市長、大森特別顧問が参加する総合教育会議(第3回)が1月29日に開催され、「学力向上に向けた総合的な制度構築について」(以下、「総合的な制度」)が決定されました。30日の新聞は、「テスト結果で校長評価 大阪市教委方針 賞与・昇給反映」(朝日)、「学テ結果で教員評価断念 大阪市 地方公務員法抵触恐れ」(毎日)と報じましたが、重要な内容を伝えていません。
 「総合的な制度」の本質は、「全国学力・学習状況調査における目標の達成に向け」「各種学力調査による学びの検証改善サイクルを確立」として、「振り返りプリント③」→全国学テ→「振り返りプリント①」→全国学テの結果を踏まえた教員研修→チャレンジテスト→「振り返りプリント②」の、「外部テスト」対策の年間取組を求める、テスト漬けのサイクルを確立することです。(資料 学力向上に向けた総合的な制度構築についてP3)

校長の人事評価に反映

 そして、「学力向上にかかる客観的数値に基づく行政評価(組織目標)と人事評価の関連付けにより、継続的に成果を挙げることを目指す」、「経年調査・チャレンジテスト結果の前年度からの向上度を学校評価の全市共通目標のひとつに位置づけ、校長のマネジメントのもとで学校全体で目標達成に向けた取組を行う。」とし、校長について、「上記結果を学校運営及び組織マネジメントに責任を負う校長の人事評価に反映。(具体的には、上記の全市共通目標の目標を目標管理の1つの項目として設定。)」としています。(同資料P6)

 学校教育の目標(学テの点数)を市長・市教委が決め(PLAN)、プリント学習を強要し(DO)、学テを実施し(CHECK)、「結果」に対して「責任」負わせる=人事評価(ACTION)、新自由主義の教育政策PDCAサイクルを確立するものです。

学力向上指標策定できず

 大森不二雄大阪市特別顧問が提案した、「新たな人事評価制度と学力向上データの利用について」では、「本市では、学力の高さではなく、学力の向上度を評価すべき」として、「公正・公平で客観的なデータ指標として学力向上度を測る指標を開発する」、「その基礎となる教育ビッグデータシステムの構築を加速する」とし、学力向上指標を向上させた大阪市上位2・5%の教員をSSと評定するとしていました。

 しかし、「総合的な制度」では、「子どもの学力に影響を与える要因は様々あり、学力向上指標(付加価値)を教員の授業指導力のみを表す指標とするには、それ以外の環境要因を排除する必要があるが、現状では下記の課題がある。○国においても考慮すべき要素(経済的・過程的要因)についてのコンセンサスがない○考慮すべき要素についてのデータ収集が困難である○習熟度別少人数授業における学級編成上の問題(単元ごとに学級編成を変更している学校がある)」ことを理由に、「当面の間、学力向上指標(付加価値)においては、環境要因を考慮しない。」としました。(同資料P5)

 「考慮しない」ではなく、出来ないのです。「家庭や経済力の差といった指導力以外の要因を排除できず、公正な人事評価を定めた地方公務員法に抵触する恐れがあるとして導入を断念した。」と毎日が書きました。

教員の人事評価 テスト結果活用

 地公法違反の指摘を避けるために教員への活用については、「人事評価において参考とする」としましたが、今年度からの新人事評価制度はテスト結果で教員を評価できる制度です。事実、学力経年調査の点数を上げる数値目標を設定させられた例があります。

教員カルテ構築

 「総合的な制度」では、「教育委員会から各学校へ小学校学力経年調査・中学生チャレンジテストにおける教員毎の前年度からの結果の伸びを示す差分平均を提供し、校長は、当該差分平均を各教員の授業力向上にかかる指導助言に活用するとともに、人事評価において参考とする」としています。(同資料P7)

 しかも、「学校評価WGや教育ビッグデータ活用検討PTにおいて、授業手法と学力との関係分析を進め、適正な根拠となる個々の教員のデータ集積を進め『教員カルテ』を構築し、完成した段階で改めて人事評価制度を設計」としています。(同資料P6)

教育を破壊する制度 これでいいのか

 学校教育の目標が学力テストの点数=数値目標に一面化され、子どもの成長・発達など顧みられない、まさに教育を破壊する「総合的な制度」と言わざるを得ません。

 「大阪市の中3生は年間で13回ものテスト漬け」との大阪市教の指摘に市民の怒りが広がり、「これでいいのか大阪の教育」との教育懇談会、学習会が各地で開催されています。