大阪市教育委員会は10月8日、学校管理規則を改正し、「校長は、国が行う全国学力・学習状況調査及び全国体力・運動能力、運動習慣等調査の当該学校における平均正答率及び平均値を含む調査結果(以下この条において「調査結果」という。)及び調査結果から明らかになった現状等を速やかに公表するものとする。」と決定しました。
大阪市教は、全国学力テストの学校別成績公表に対する見解を明らかにし、保護者、地域、市民の皆さんに呼びかけました。「子どもの心を傷つける全国学力テストの学校別成績(平均正答率)の公表に反対の声を上げましょう。学校の序列化、競争の教育では学力の向上は望めません。健やかな子どもの成長・発達を願うみんなの声を大阪市教育委員会、大阪市に届けましょう。」
◇全国学力テストの学校別成績公表に対する大阪市教の見解(PDF)
(以下は大阪市教の見解PDFファイルと同じ内容です)
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子どもの心を傷つける全国学力テストの学校別成績(平均正答率)の公表に反対します。
学校の序列化、競争の教育では学力の向上は望めません。子どもを守る保護者、地域、教育関係者の声を大阪市教育委員会、大阪市に届けましょう。
2013年10月9日
大阪市学校園教職員組合
学校管理規則改正-学力テスト学校別成績公表
大阪市教育委員会は10月8日、学校管理規則を改正し、「校長は、国が行う全国学力・学習状況調査及び全国体力・運動能力、運動習慣等調査の当該学校における平均正答率及び平均値を含む調査結果(以下この条において「調査結果」という。)及び調査結果から明らかになった現状等を速やかに公表するものとする。」と決定しました。
全国学力テスト(「全国学力・学習状況調査」)の学校別成績の発表については、昨年12月、「校長は、学校協議会の意見を踏まえ、当該学校の平均正答率を含む調査結果を公表又は開示するか否かの判断を行う。」と決定していました。公表した学校は全小・中429校のうち、今年6月末で19校にとどまりました。学校現場の意見のあらわれであるこの結果を、「少なすぎる。公表の責任を校長に負わせるのではなく、教育委員会の責任として全校公表を行うべきだ」(10月1日の教育委員会)として、今回の決定となりました。教育委員会の自らの決定も、学校現場の意見も無視する、強引なやり方は教育には相いれません。しかも、「市教委によると、公表しない校長は処分の検討対象とする」(産経新聞8日付)ものです。
東京新聞8日付は、「意見割れたまま採決」の見出しで、「長谷川恵一委員長が現場の反発に懸念を示して最後まで反対を続け、意見が割れたまま採決する異例の展開をたどった。『現場はいろいろな意見を持っている。もっと真摯(しんし)に聞くべきだ』。長谷川委員長は、2012年度の成績を公表したのが全市立小中学校の約4%の19校にとどまったことを指摘。…『教育の世界に対し、きちっと一緒につくっていく姿勢を示さないといけない』。長谷川委員長は最後に切々と訴えたが、採決では他の4人が挙手し義務化が決まった。」と報じました。教育の問題を「意見が割れたまま採決する異例の展開」で決めてはなりません。
文部科学省-大阪市の方針は実施要領を逸脱している
今回の決定についての文部科学省の見解をNHKは8日、次の様に報道しました。「学力テストを所管する文部科学省学力調査室は『保護者や地域の人たちに情報を公開することは大事だが、過度の競争や学校の序列化を招かないよう、今年度の実施要領では公表するかどうかは学校の自主的な判断に任せている。大阪市教委の方針は実施要領を逸脱している』と話しています。また、学校管理規則を変えて公表を義務づけるケースは過去に聞いたことがないということで、学力調査室は『ルールに従うよう改めて実施要領の趣旨を伝えたい』と話しています。」
産経新聞8日付も「文科省が定めた学力テストの実施要領では、学校の序列化を招くとの懸念から公表の判断は各校に委ねており、文科省は市教委の動きについて『公表の強制につながるものであれば修正を求めていく』としている。」と報じました。
文部科学省も指摘するように、大阪市の決定は異常としか言いようがありません。
教育歪める学力テストの実態
全日本教職員組合が昨年実施したアンケート調査では、「学テ対策」として過去の問題(通称・過去問)や同傾向の問題をドリルとして繰り返しやらせるなどの事例が各地で見られます。北海道では教育委員会作成のドリルを学校現場で使うよう強要。「授業をつぶして徹底的に過去問練習」(秋田県)、「過去問を何度も繰り返し練習させる」(埼玉県)、「予想問題が県から出され、授業中に2回は行うよう指示があった」(佐賀県)など、普通の授業をつぶして「学テ対策」にあてている例がでています。全教は、「一人ひとりの子どもの課題をみつけて、それにあった授業をするのではなく、学力テストの平均点をあげることを目的にする傾向が強まっている」と指摘しました。学力テストの学校別成績が公表されればこのような傾向が強まることはあきらかです。
学習院大学教授(教育学)の佐藤学さんは、「全国学力調査をしても、点数や順位に振り回されるばかりで、結果を教育政策や授業改善に生かせないのなら意味がありません。…日本ではむしろ、学力調査を競争による統制の手段として使おうとしています。そのような使い方で学力が向上した国はありません。」と指摘しています。
「あの地域は、あの学校は点数が低い」と見られたら、一番傷つくのは子どもたちだとの声がすでに上がっています。大阪市でそのような事態を作ってはなりません。
橋下市長による教育破壊は許さない
橋下徹大阪市長は8日、学力データは「選択の一つの要素。保護者の選択権を奪う方がデメリットが多い」と述べ、学校選択制=学校統廃合をいっそう進めようとしています。幼稚園民営化、小中一貫校による学校統廃合、「国家戦略特区」への「学校公設民営化」提案=学校教育本体を「カネもうけ」の対象とすることなど、公的責任を縮小、放棄する政策を推し進めています。
大阪市学校園教職員組合は、保護者、地域、市民の皆さんに呼びかけます。子どもの心を傷つける全国学力テストの学校別成績(平均正答率)の公表に反対の声を上げましょう。学校の序列化、競争の教育では学力の向上は望めません。健やかな子どもの成長・発達を願うみんなの声を大阪市教育委員会、大阪市に届けましょう。